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PTSD・対人恐怖症

「トラウマ」と言う言葉を聞いたことがあるかもしれない。

小さい時に自分より大きな犬に噛まれた
トラックにひかれそうになった
何かを食べて苦しくなった

など、命の危険を感じるほどの経験をした後に、その体験が心にとりついてずっと恐怖を感じてしまう事を「トラウマ(trauma)」というんだ。

トラウマは、似たような体験をする度に恐怖を思い出してしまう。
一度犬に恐怖を覚えたら、犬嫌いになってしまったり、
トラックを見ると、気分が悪くなったり、
絶対に食べられないものがあったり、
受けたダメージによってレベルは変わるけど、心に影響を与えていく。

また、トラウマによって何もやる気がおきなくなってしまう事がある。
地震や犯罪など、自分にはどうにもできないものに巻き込まれた時、「自分には何もできない」という無力感を感じて、その後もやる気を無くしてしまうんだ。

この状態が1ヶ月続くと「急性ストレス障害」、1ヶ月以上続くと「PTSD」と診断される。

つまり、

トラウマ→急性ストレス障害→PTSD

と言う順番で状態がひどくなっていくんだ。

・PTSDになってしまうと、、、

イジメを受けている間、心はずっと苦しい状態にあった。
その状態に無理矢理慣れようとしてきたから、いきなり「元に戻れ」と言ってもそう簡単には戻らない。

それで次のようなPTSDの症状を引き起こしてしまうんだ。

PTSDの症状例
・感情を失う
あまりにも「悲しい」「辛い」という感情を持ちすぎると、心が「もう感情を持つのはやめよう」って思ってしまうんだ。それでイジメの後に「うれしい」とか「楽しい」という感情も持てなくなってしまう。


・対人恐怖症
イジメは災害とは違って、「人間」が起こすもの。誰かにイジメを受けると、「他の人も自分をいじめるんじゃないか?」って心が思い込んでしまう。それで人に会うこと自体が怖くなってしまうんだ。


・引きこもり
他人に会うことが怖いと、外に出ること自体が怖くなってしまう。全く知らない人でも「自分の事を話して笑ってるんじゃないか?」「自分に危害を加えようとしているんじゃないか?」って思ってしまう。それで家から一歩も出れなくなってしまう。


・攻撃行動
「誰もが自分をイジメようとしている」と心が感じている時は、周りの人間全てが「敵」に見えてしまう。敵に出会った時にとる行動は「攻撃」か「防御」。自分よりも強い相手には心を閉ざして「防御」しようとするのに対して、家族や友人など本当に心配してくれる人達に対して「弱い敵」と判断した心は、きつい言葉をかけたり、自分が受けた行為と同じ事をしてしまう。イジメを経験した人が今度はイジメる側にいってしまうのもここに原因がある。


摂食障害
何もかもやる気が起きなくなってしまうと、ご飯を食べる気もなくなってしまう。辛い時にはご飯がのどを通らないよね。それがずっと続くんだ。身体はすっかりやせ細って、点滴を受けないと危険な状態になってしまう。それでもご飯が食べられない。食べると吐いてしまう。
逆に食べずにはいられない、という子もいる。食べては戻し、食べては戻しを繰り返す。「食べる」ことでストレスを無くそうとしているんだ。
このような摂食障害を引き起こすのもPTSDの影響でよく見る症状だ。





俺が相談を受けに行く場合、ほとんど「その子の部屋」で話を聞く。そこがその子にとって一番安心していられる場所だからだ。何時間も時間をかけて、その子の話を聞いて、「この人は自分に危害を加えない」って心がわかるまで話をする。何でも同意するのではなく、「それは俺もそう思う」「それは俺はこう考えるな」と、ちゃんと家族じゃない「他人」として話をしていくことで、少しずつ心が他人を受け入れていくんだ。そういうカウンセリングを何度も行ってきた。

初めて会った子たちは多くの場合薄暗い部屋で、無表情で座っている。
体型を見て極度にやせていたり、太っていたりするのを見ると、
この子がどれだけのダメージを受けてきたのかがわかるんだ。


イジメ自体もきついけど、イジメが終わってもこんな辛い日々が続くなんて。
本当に辛い。本当に辛い。

・PTSDの治療

PTSDは風邪やインフルエンザとは違って、「これをすればすぐ治る」という治療法は無い。

じっくり時間をかけて心のリハビリをしていくことで、心を以前の正常な状態に戻していくしかないんだ。


代表的な治療法
・カウンセリング
じっくりと自分を理解してくれる他人と話をすることで、自分がイジメを受けてきた時期が「異常」だったと心が納得できるようにする作業がカウンセリングだ。俺も教育カウンセラーという資格を持っていて、子ども達のカウンセリングを行っている。例えばこんな会話をするんだ。

「先生、僕がイジメられたのって僕が悪いの?」
「絶対そんな事ないよ。イジメた方が悪いに決まってる。」
「そうだよね。あんなヤツらいつか殺してやる。」
「それはダメ。お前が犯罪を犯したら家族も苦しむし、俺もすっげぇ悲しい。だからお前は自分の進む道で頑張ってイジメたヤツらを見返してやればいいんだよ。」
「俺にできるかな?」
「できるよ!応援するよ!」

実際はこんなに簡単には進まないけど、こんな感じで物事の善悪をちゃんと教えていく。
今までの狂った価値観を、正しい価値観に直していくんだ。
そしてその子がまた何かを夢見て、目指すようになった時に全力で勉強を応援する。
それが俺がやってる仕事。


カウンセリングは地域のカウンセリングセンターや、学校のスクールカウンセラー、病院のカウンセラーなど、色んな所でカウンセリングを受けられる。
もしも悩んでいたら一度カウンセリングを受けてみることをおすすめするよ。



・心療内科の受診
症状がひどい時、話をすることもできない時は心療内科という病院を受診することをすすめる。
心療内科では薬を出してくれる。薬の力で興奮を抑えたり、落ち込みを抑えたりすることができる。
薬を飲んで症状は落ち着くけど、それでPTSDそのものが治るわけじゃない。
お医者さんと相談しながら、症状を薬で抑えて、カウンセリングでリハビリして、って言うのが今現在の代表的な治療になっている。





・ペット療法
最近はカウンセリング(心のリハビリ)の分野にもどんどん新しい技術、方法ができてきている。
例えば、ペットを飼うことで心を癒やしていくという「ペット療法」がある。

人間を前にすると症状が出てしまうけど、動物なら大丈夫という場合がある。
動物は弱い。人間よりも圧倒的に弱い。守ってあげないと死んでしまう。
そして動物は純粋だ。キミを裏切らない。
そんな動物の特徴を活かして、動物を育てながら「命への想い」「愛情」「感情」などを取り戻していくんだ。

俺が経験したケースでもこの方法で回復していった子が何人もいた。

でも、この方法が誰にでも当てはまるわけではない。
与えられた動物を死なせてしまってますます傷ついたという場合もあった。

大事なのは自分に合った治療法を見つけること。


少しずつ、色んな方法が生まれているから、きっと自分に合った方法が見つかるはずだ。